まず、容量Whと出力Wを分けて確認
何時間使いたいかは「年間消費電力量」から、動かせるかは「定格消費電力・起動時の電力」から考えます。冷蔵庫の平均Wだけで、ポータブル電源の出力Wを選ばないでください。
このページの例では、年間272kWhの冷蔵庫を平均31Wとして計算すると、24時間分に必要な容量は約973Whです。満充電、新品相当、変換効率85%、残量10%を残すという仮定の試算で、実際の稼働時間や動作を保証する値ではありません。
計算ツールへの入力手順へ1. 型番を調べ、仕様表の3つの数字を読む
本体ラベルや取扱説明書で型番を確認し、メーカーの仕様表を開きます。「年間消費電力量(kWh/年)」と「定格消費電力(W)」は別の数字です。
実在する1機種の例として、パナソニック NR-B18C3(180L)の仕様表には次の値が載っています。同じ容量の冷蔵庫でも値は異なるため、手元の型番に置き換えてください。[1]
- 年間消費電力量
- 272kWh/年長い期間に使う電力量。容量を考える入口。
- 電動機の定格消費電力
- 53W電動機の仕様値。年間平均のWとは異なる。
- 電熱装置の定格消費電力
- 120W電動機以外にも電力を使う装置がある。
いずれも50Hz・60Hzで同じ値。年間消費電力量はJIS C 9801-3:2015に基づく表示です。53Wと120Wを常時の合計値と見なしたり、起動電力として使ったりはできません。
2. 年間kWhを平均Wに換算する
年間消費電力量は、JISで定められた測定・計算条件による表示値です。実際の消費電力量は周囲温度、温度設定、ドアの開閉、食品の量などで変わります。年間値を365日で割った値は、停電当日の消費量や必要容量の上限を示すものではありません。[5]
1kWhは1000Wh、365日は8760時間です。年間の電力量を時間で割ると、1年間で均した平均の電力になります。
272 × 1000 ÷ 8760 ≒ 31.05W
ここからは既存ツールのプリセットに合わせて31Wに丸めて計算します。24時間つないで使う例なら、31W × 24時間 = 744Wh。これは冷蔵庫側で使う量で、電源の公称容量は損失と残しておく分を含めて考えます。
使える割合 = 0.85 × (1 − 0.10) × 1.00 = 0.765
31 × 24 ÷ 0.765 ≒ 973Wh
必要容量は計算ツールに合わせて1Wh単位で切り上げています。85%は計算上の仮定で、全製品に共通する性能値ではありません。電池の状態は100%、満充電から使う条件です。電源自体の消費などで実際の使える量は変わります。
- 12時間冷蔵庫側372Wh → 必要容量 約487Wh
- 24時間冷蔵庫側744Wh → 必要容量 約973Wh
- 48時間冷蔵庫側1488Wh → 必要容量 約1946Wh
例えば1000Whの電源なら、この条件で使える量は1000 × 0.765 = 765Wh。765 ÷ 31 ≒ 24.7時間です。ただし年間平均は、その日の冷却や霜取りの運転を再現するものではありません。上の必要容量ちょうどで、希望時間が必ず確保できるとは考えないでください。
この例の冷蔵庫は冷え具合に応じてモーターの回転数を変えるインバーター制御で、自動霜取りも行います。[2] 使う条件でどれくらい変わるかを知りたい場合は、仕様表の換算値に加え、手元の冷蔵庫の実際の電力量を確認します。
3. 「平均31Wだから出力31Wでよい」とは考えない
容量が十分でも、出力の条件が合わないと冷蔵庫は動きません。Jackeryのメーカー解説でも、冷蔵庫の起動時には一時的に大きな電力が必要になるため、定格出力と最大瞬間出力の確認を案内しています。[3]
- 冷蔵庫側:取扱説明書・メーカー窓口で、給電に必要な条件と起動時の電力を確認する。
- 電源側:AC出力の電圧・周波数、波形、定格出力、瞬間最大出力とその継続時間・適用条件を、冷蔵庫の取扱説明書が求める条件と照合する。
- 組み合わせ:両方の型番を伝えて対応可否を確認する。仕様の照合後、各取扱説明書に従い、停電前に動作を確かめる。
NR-B18C3の上の仕様表には起動電力の数値がありません。一般的な倍率を掛けて、この型番の起動電力を確定したことにはできません。また、電動機53Wだけを見て、電熱装置120Wを見落とさないようにします。
計算ツールのW判定は入力した数字同士の比較です。年間平均31Wを入れた結果は、冷蔵庫の起動・霜取り時の動作確認には使えません。
4. 自分の条件を既存ツールへ入れる
- 「必要な容量・出力は?」を選ぶ。
- 家電の行を冷蔵庫1台にする。他の行があれば「削除」する。
- 「消費電力」に、手元の年間kWhから求めた平均Wを入力する。この例では31W。
- 「1日に使う時間」を24時間にする。断続的に電力を使う冷蔵庫を年間平均で計算するので、ここでさらに運転率を掛けない。
- 変換効率85%、残しておく電池10%、電池の状態100%、何日分1日にすると、必要容量は973Whになる。
「冷蔵庫(180L・平均)」のプリセットを選ぶと、出力条件は「別途確認が必要」と表示されます。平均Wは容量の試算に使い、購入時の出力選びには前の節の仕様照合を行ってください。自分で年間kWhから換算した値を入力する場合も、家電名に「冷蔵庫(平均)」と記入すると、この注意表示が出ます。
容量を変えて大まかな時間を比べるなら容量別の使用時間早見表、冷蔵庫以外の家電も見るなら家電別シミュレーションを使えます。他の家電を追加した分だけ必要な電力量が増え、同時使用の出力条件も変わります。
5. 停電前に、型番と使い方を確認しておく
冷蔵庫と電源の型番、年間kWh、出力条件、計算で使った日数をメモしておくと、家族でも同じ条件を確認できます。平常時に充電と取扱説明書を確認し、使用前にはメーカーのお知らせとリコール情報を調べてください。
NITEは、ポータブル電源への衝撃・高温を避けること、異常があれば使用を中止して事業者に相談すること、使用前にリコール情報を確認することを案内しています。災害で浸水・損傷した電気製品への通電にも注意が必要です。[4]
ここで計算するのは電源容量です。冷蔵庫内の食品が安全に保存できる時間は、この計算からは判断できません。
出典・計算の確認
以下は一次資料。確認日:2026年10月12日(日本時間)。数値例は実機試験ではなく当サイトでの計算です。
- Panasonic NR-B18C3 仕様・詳細情報:年間272kWh、電動機53W、電熱装置120W、測定規格。
- Panasonic NR-B18C3 概要:インバーター制御、自動霜取り。
- Jackery「ポータブル電源で冷蔵庫は何時間持つ?」:定格出力と起動時の電力を確認する考え方。販売メーカーの解説であり、すべての冷蔵庫の実測資料ではありません。
- NITE「災害時にも活躍する携帯発電機やポータブル電源の事故と停電復旧後の通電火災に注意!」(2024年8月27日):発表資料PDFのポータブル電源の注意点、リコール確認、通電火災。
- Panasonic 冷蔵庫総合カタログ(2026年春夏):「冷蔵庫の消費電力量について」(PDF12ページ)。JISの測定・計算条件と、実際の消費電力量が使用条件で変わる旨。